高い耐疲労性・耐久性。ポリアセタール樹脂(POM)射出成形時のポイント

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ポリアセタール樹脂(POM)とは

ポリアセタール樹脂(POM)とは、ポリアセタールとも呼ばれます。摩擦係数が小さく自己潤滑性があり、耐摩耗性に優れる高機能エンジニアプラスチックです。幅広い業界で様々な製品に使用されています。機械的強度、耐摩耗性、摺動性、電気絶縁性に優れ、吸水・吸湿性が小さく、寸法安定性の高い樹脂であり、繰り返し動作が求められるギヤ・駆動部等、長時間使用される部品に適しています。

一般的なポリアセタール樹脂(POM)の特性は、下記の通りです。

  • 摩擦係数が小さい
  • 自己潤滑性が高い
  • 引っ張り強度が高い
  • 寸法安定性が高く、小さい部品に最適
  • 靱性が高い
  • 剛性が高い
  • 弾力性が高い
  • 電気絶縁性が高い
  • 耐薬品性に優れる

ポリアセタール樹脂(POM)は、耐摩耗性、摺動性が大変優れていることから、金属に変わる素材として、ベアリング、ギヤ、軸受の代替え素材として昨今、活躍しています。

また、ポリアセタール樹脂(POM)は寸法安定性も優れており、家電製品や自動車部品まで広く使用されています。

性質 / 特性

性質 / 特徴 備考
分子構造 結晶性樹脂
収縮率 大きい 1.5~2.5%
白色
ガラス転移温度 低い -50℃
耐衝撃性 衝撃に強い
耐熱性 80℃~120℃と高い
耐候性 変色する
電気的性質 優れた電気絶縁性をもつ
耐薬品性 強酸には弱い
寸法安定性 成形しやすい
機械特性 衝撃に強い
成形品の表面 耐傷 金型温度が高いと良くなる

ガラス配合の効果

ポリアセタール樹脂(POM)はガラスを配合することで、機能が向上するといった特徴があります。ガラス配合によるメリット・デメリットとして以下のようなものがあります。

メリット

ポリアセタール樹脂(POM)にガラスを含有する事で、引張、弾性率、衝撃強さが著しく向上します。更に強度や耐久性が求められる、ギヤ、軸受に使用されます。

デメリット

ガラスが含まれていることから、通常のスクリューで成形すると、スクリューフライト部、 スクリュー3点セットが摩耗してしまい、ショートや成形条件のバラツキの原因となります。 耐蝕耐摩耗スクリュー、スクリュー3点セットを導入にすることで改善されますが、高価な ため、コストアップとなります。

代表的な用途

射出成形加工で使用されるポリアセタール樹脂(POM)は、私たちが日常生活でよく使用する製品の備品にも用いられており、下記が代表的な用途です。

私たちの日常生活でよく使用されています。

  • 工業部品:ベアリング、ギア、プーリー、軸受
  • 自動車:パワーウインドウ駆動部
  • 日用品:フック、グリップ、カバー
  • 楽器:リコーダー、木菅楽器、金菅楽器

ポリアセタール樹脂(POM)の特徴を活かした用途

ポリアセタール樹脂(POM)は、主に工業部品の内部に使用されます。経済的に安価であること、耐摩耗性、摺動性、寸法安定性の良さから金属に代替品として幅広く使用されています。

特に、工業部品の精密分野での使用率が高く、ベアリング、ギア、プーリー、受軸に使用され、工業業界では無くてはならない樹脂になります。また、優れた電気絶縁性があるので、家電製品や自動車のパワーウインドウ内部にも使用されています。

ポリアセタール樹脂(POM)の成形加工時におけるポイント

ポリアセタール樹脂(POM)は、基本的には予備乾燥が不要です。成形にあたっては加熱筒設定と金型温度設定がポイントになります。

原料準備時のポイント

ポリアセタール樹脂(POM)は、吸水、吸湿性が小さいため、基本的に予備乾燥は必要ありません。 ですが、一度開封したりシルバーが多発する場合は、下記の通りに予備乾燥を行う必要が出てきます。

  • 乾燥温度:80℃〜90℃
  • 乾燥時間:3時間〜4時間

注意事項として、必要以上に乾燥すると、黄色に変色するので注意が必要です。

加熱筒設定時のポイント

加熱筒温度は、一般的に170〜 210℃に設定します。低い温度で成形すると、充填された樹脂は途中で固化が始まり、最終充填部まで行き届かず、成形品はショートします。また、高い温度で成形すると、樹脂からガスが出ますので注意が必要です。加熱筒温度は、ランナー、ゲート、成形品の形状を考慮した上で、設定することがポイントです。

金型温度設定時のポイント

成形品の形状によりますが、金型温度は60℃〜80℃に設定します。80℃以上に金型温度を上げると流動が良くなり過ぎてしまい、バリ不良になる可能性があるので注意が必要です。

よくある成形不良とその対策

ポリアセタール樹脂(POM)は結晶性樹脂です。取扱い方法は比較的易しい樹脂です。 その特性に合わせた成形条件出しが必要になります。よく発生する不良と対策のポイントは以下の通りです。

湯ジワの原因と対策

湯ジワは、ゲート付近または、最終充填部に発生します。成形品の表面が、波模様になる事象です。射出速度が遅い場合や、溶融樹脂が流れにくい時に発生します。

下記の3つの方法で改善します。

射出速度を上げる

射出速度を上げることにより、キャビティー内の流動性が上がります。また複雑な形状の場合は、多段制御を使用することにより改善します。流動末端や、ゲートから遠い部分に、湯ジワが見られる場合に有効です。

金型温度を上げる

金型温度を上げることにより、樹脂の固化速度を遅らせることで改善します。薄肉で平たい面に、湯ジワが見られる場合に有効です。

樹脂温度を上げる

樹脂温度を上げることにより、樹脂粘度が下がり、スプルーから最終充填部まで樹脂が流れやすくなり、改善します。注意点としては、樹脂温度を上げることにより、ガスが発生しやすくなります。射出速度・金型温度調整しても湯ジワが見られる場合に有効です。

ヒケの原因と対策

ヒケは、成形品にできた凹みのことです。特にポリアセタール樹脂(POM)は、肉厚部(リブやボス)や流動末端部に発生しやすい事象です。 ヒケの原因は、樹脂の収縮によるものです。肉厚部、流動末端部では、他に比べて収縮量が大きくなるので、凹みになります。2次圧(保圧)で収縮分を補填し、密度を上げることで改善します。

真空ボイドの原因と対策

真空ボイドは、成形品の肉厚部分に2次圧(保圧)が十分に作用しなかった時に、成形品内部に収縮が起こる事象です。

下記の3つの方法で改善します。

金型温度を下げる

金型温度を下げることにより、成形品の後収縮が小さくなり改善します。ハイサイクル成形など、冷却時間が十分に確保できない場合に有効です。

2次圧(保圧)を上げる

2次圧(保圧)で収縮分を補充することで、樹脂の密度が高くなり改善します。流動末端部、ゲートから距離が遠い部分に真空ボイドができ、バリが発生していない場合に有効です。

保圧時間を調整する

ゲートシール時間は考慮すべきですが、保圧時間を段階的に設定することにより、より多く溶融樹脂を送り込むことで改善します。ゲートシール時間が長く、保圧を段階的に設定できる場合に有効です。

注意点としては、必ずクッション量が残っているか確認して下さい。クッションが0㎜の場合、 いくら保圧時間を長くしても、効果はありません。

ゲート凸(ゲート残り)

ポリアセタール樹脂(POM)は、主にベアリングやギヤなどの回転部に使用されます。ゲート処理が不十分で、ゲートの切り残し(ゲート残り / ゲート凸)が有ると、嵌合時、正常に駆動しなくなるので、ゲート凸には十分な配慮が必要です。

ピンゲート金型使用時のゲート凸(ゲート残り)の対策

ピンゲート金型のゲート凸(ゲート残り)は、射出時間や、型開きスピードを調整することで改善します。

射出時間(2次圧)を調整する

2次圧を多段階に設定し、ゲートにかかる圧力を変化することで、ゲート残りが改善します。

型開き速度の調整をする

ピンゲート金型は、金型が開く動作に連動して、ピンゲートが製品と切り離されます。型開きスピードを速くするか、遅くすることで、ゲートの切れ方が変わってきます。

ゲートカット機を使用する場合に考慮すること

  • ゲートサイズに応じて適正なニッパーを選定する
  • 強化ニッパーを使用する。
  • 強化スプリングを使用する。
  • スライドニッパー式を用いて、成形品とゲートが面一になるようにカットする。

なお、強化スプリングは消耗品ですので交換頻度に注意が必要です。定期的にスプリングを交換しましょう。

手動ニッパーを使用する場合に考慮すること

サイドゲートを手動カットする場合は、ゲート対して垂直に、ニッパーの腹をあてるよう意識しながらカットすること。

まとめ

ポリアセタール樹脂(POM)の取扱い方法や加熱筒、金型の設定、よく発生する不良について説明しました。 ポリアセタール樹脂(POM)の成形の際には、ガスが発生しやすいので、工場内の換気を十分行って下さい。成形品の形状に応じて、加熱筒温度や、金型温度の設定にします。サイドゲート凸には十分注意して、カット跡を確認しましょう。上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。