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射出成形におけるフローマークとは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形におけるフローマークとは?主な発生要因とそれぞれの対策

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フローマークとは

フローマークとは、成形品の表面にさざ波模様や、湯ジワ模様が出る外観不良です。ゲート通過時から製品部にかけて発生する場合や、最終充填部付近に発生します。樹脂の流れが遅くなったり、途中で息継ぎをしてしまうことが要因です。

フローマークが発生しやすい箇所

フローマークは、溶融樹脂が金型に充填される過程で発生します。ゲートから製品部に差し掛かるゲート付近や、成形品の肉厚が変化する箇所、ゲートから1番遠い最終充填部に発生します。

ゲート付近で発生しやすい理由

金型に充填された溶融樹脂は、スプルー、ランナー、ゲートの順で通過し、製品部に流れ込みます。ゲートからキャビティー内の金型表面に接触したところから、樹脂の温度は冷えていきます。樹脂の先端部で温度差が生じることで充填速度が変化し、フローマークが発生します。一直線に流れる樹脂の模様、蛇行するようなジェッティング模様、金型の段差に衝突した時に生じるしわ模様など、様々なフローマークが発生します。

ゲート形状とフローマークの関係

サイドゲート、ファンゲート、オーバーラップゲートは、製品の横から充填されるゲート形状で、ランナーからそのままの勢いで樹脂が解放されるので、充填速度がバラつきやすく、フローマークが発生しやすいです。一方、ピンゲート、サブマリンゲートは、ゲート径が小さいため、ゲート通過時に流動が制限されます。その影響で製品部に充填する樹脂は速度の調整がしやすくフローマークが発生しにくい特徴があります。

肉厚が変化する箇所で発生しやすい理由


金型内部が複雑なため、樹脂は流れやすい方向に流れます。肉厚が変化する箇所では抵抗が変わるため、充填速度が遅くなりやすく、そのため模様ができることがあります。

流動末端付近で発生しやすい理由

流動末端付近は、充填される樹脂の最終充填位置です。充填圧力が不十分であったり、ガス抜けが悪いなど、充填速度が変化してしまうとフローマークが発生します。流動末端のフローマークは、充填速度の失速が原因の湯ジワ模様が特徴的です。

フローマーク発生の要因と対策

射出成形加工におけるフローマークの発生要因は、大きく分けて射出工程と各部の温度設定の2通りです。

射出工程に起因するフローマーク

フローマークは、ゲート付近や最終末端付近など指定の箇所に発生します。フローマークの発生位置を通過する時の流動をピンポイントで調整することがポイントです。また、保圧力が適正に設定されていることも重要になります。

射出圧力で考慮すべきこと

フローマークへの対策は、樹脂の流れが失速しないように余裕をもった射出圧力がポイントです。射出圧力の実測値に対して1割~2割増しにした数値設定が目安になります。射出速度30mm/secを出すために実測値で80Mpaの射出圧力が必要なら、90Mpaの充填圧力を設定します。それ以上に高い射出圧力設定は不要です。

射出速度で考慮すべきこと

フローマークは、射出速度が変化する時に成形品の表面に現れます。金型の形状や、ゲートの位置、ゲート幅を確認して射出速度の数値を設定していきます。

射出速度は、ゲート通過時は速くし過ぎないことと、最終充填部では失速しないことに注意が必要です。その他の位置に発生するフローマークは、発生する箇所とスクリュー位置を特定し、発生箇所の射出速度を調整します。

保圧力で考慮すべきこと

保圧力が不足する場合は充填量不足となり、湯ジワが発生します。このような流動末端に発生するフローマークには、保圧力を上げて必要分をしっかりと充填することがポイントです。保圧力を高めても改善しない場合は、ガス逃げ不良によるフローマークです。そんな時は、エジェクターピンやガスベントの清掃が効果的です。

温度に起因するフローマーク

フローマークは、金型温度や加熱筒温度が適正値でない場合に発生します。

一般的に、粘度が高く流動性が悪い樹脂や、固化速度が速い樹脂を使用する場合は、充填途中で失速するためフローマークが発生します。

加熱筒温度で考慮すべきこと

加熱筒の設定温度が低いと、流動性が悪く固化速度が速くなります。流動末端までスムーズに充填されない時は、加熱筒温度を上げることが効果的ですが、一方でガスの発生が多くなり、シルバーやウェルドが強くなるので、変更時は安定するまで、成形品をよく確認することが重要です。

金型温度で考慮すべきこと

金型の設定温度により樹脂の流れやすさは大きく変わります。キャビティー内でスムーズに流動する温度設定が必要です。

立ち上げ時は、金型製品部の実測温度の確認がポイントになります。温調機の測定値ではなく、金型の製品部(入れ子)の温度が、設定温度に到達していることが大切です。キャビティー、コアの実際の温度を計測します。大きい金型の場合は、設定温度まで昇温するのに時間がかかりますので、金型を低圧で閉めて待ちましょう。
また、金型の水管の一部が詰まるとその部分は温度が高くなり、冷却不足によるフローマークが発生することがあります。連続成形を一旦停止し、金型表面を触ると判断できます。表面が一部分熱くなっています。(火傷に注意して触れてください。)特にコアピンの噴水形状の冷却配管に起こりやすい詰まりです。そんな時は、水管をエアーパージして詰まりを除去したり、改善しない時はオーバーホールしましょう。

フローマークを流出しないために

下記の2通りを流出対策を実施することで、フローマークを予防します。

初品、中間、最終サンプルの検査

立ち上げ時は、品質規格に合格しているかしっかり初期検査することが重要です。製品を良く確認して、基準サンプル・不良限度サンプルと見比べましょう。 もし判断が難しいようであれば、一旦品質管理部門に判断を委ね、合格の確認ができ次第、立ち上げをすることで流出予防ができます。また、生産中は、定期にタイムサンプルを採取し品質確認をします。特に原料ロットが変わった時や、チョコ停後は良く検査しましょう。また、生産を止める前に最終サンプルに異常がないか検査をしましょう。

抜き取り検査

連続生産中に、ランダムで製品を抜き取り、フローマークが出ていないか確認します。

連続生産時間が長い場合、初品、中間、最終サンプルだけでは、成形条件の変化点を見抜けない場合があります。そこでランダムで製品を抜き取り、製品の状態を確認することで、更に不良品の流出予防ができます。

まとめ

フローマークについて、不良発生要因及び原因、不良対策についてまとめました。

フローマークは、射出工程及び保圧工程での適正な数値や、各部の温度設定を整えることで予防できます。連続生産中の変化点に注意すると共に、次工程や客先に不良が流出しない管理が重要です。
事前に対策をして、フローマークを見逃すことなく、高い成形加工技術の確率をめざしましょう。