製造現場では、「ここを直せばもっと良くなるのに」「この作業、無駄が多い気がする」といった現場の“気づき”が日々生まれています。ところが、こうした気づきが形にならず、改善活動が続かない──そんな悩みを抱える工場も少なくありません。
「忙しくて改善まで手が回らない」「やっても成果が見えにくい」「どうせ誰も見てくれない」といった声が重なると、やがて改善活動は形骸化してしまいます。
では、どうすれば改善が“現場の文化”として根づき、継続的に活性化していくのでしょうか。
経済産業省の「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」では、こうした課題に対して「変革課題マップ No.46」として、改善活動を活性化させるための5段階の仕組みづくりが提示されています。
https://www.nedo.go.jp/library/smart_manufacturing_guideline.html
改善が活発な工場では、次のような状態が当たり前になっています。
つまり、改善活動が「人任せ」「気合と根性」ではなく、仕組みによって自律的に動くようになることが、目指すべき姿です。
第一歩は、「どんな製造実績データを取得するか」を明確に定義し、誰が見ても同じように記録できるように標準化することです。手書きやExcel入力など、形式がバラバラでは意味がありません。
✔ 例:日報フォーマットを統一/記録すべき項目(生産数・不良数・稼働率など)を定義する
次のステップでは、記録されたデータを一元的に集約・管理します。これにより、部署ごと・人ごとのばらつきが減り、全体を俯瞰できるようになります。
✔ 例:紙の記録をデジタルに集約/各ラインの実績データを一つのシステムに集める
この段階では、蓄積されたデータを“現場にすぐ返す”しくみが導入されます。たとえば、生産数が計画を下回っている場合、それを即時に見える化し、その日のうちに改善策を検討できる状態をつくります。
✔ 例:ダッシュボードでリアルタイム表示/日々のKPIレポートを現場で共有
このレベルでは、収集したデータを使ってKPIの悪化リスクを早期に検知し、「どの改善策がどれだけ効果的か」をシミュレーションできるようになります。単なる“見える化”から一歩進んだ、戦略的な改善判断が可能になります。
✔ 例:AIによる傾向分析/ライン停止リスクの早期警告と対処案の提示
最終段階では、現場の進捗や状態に応じて、システムが最適な改善策を提示し、現場が即応できる体制が整います。改善策の指示だけでなく、対応結果が再びシステムに取り込まれ、次の判断にも反映されます。
✔ 例:「今すぐこの対策を行ってください」と自動で提案/対応後の効果が次の分析に活かされる
改善活動は、一人の頑張りでは長続きしません。データに基づく気づきと判断、そして即時のアクションを促す仕組みがあるからこそ、現場全体が“当事者”として改善に取り組むようになります。
あなたの工場でも、まずは「どんな情報を集め、どう活用するか」から始めてみてはいかがでしょうか?
改善が“自然と回る”工場づくり、その第一歩を踏み出しましょう。