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繊維強化プラスチックの用途や特徴、メリット・デメリット、取扱方法について解説

繊維強化プラスチックの用途や特徴、メリット・デメリット、取扱方法について解説

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繊維強化プラスチックとは

射出成形加工において、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)は、主となるプラスチック原料に細かな繊維を混錬することで、物性や耐性を強化したプラスチック原料です。
耐久性、耐熱性、通電性、耐候性などさまざまな性質を強化し、工業部品から家庭用品まで広く使用され、高機能性を支える重要な部品として組み込まれています。ガラス繊維やカーボンファイバーが一般的です。近年では、環境負荷のより少ない植物由来のセルロースナノファイバーを含有した繊維強化プラスチックが話題です。

 

繊維強化プラスチックの種類と特徴

プラスチックの弱点である強度不足を、別の素材の機能を付加することで克服しています。

繊維強化プラスチックの中で、最も広く使用されているのがガラス繊維を含有したプラスチックです。その他には、カーボン(炭素)繊維、セルロース繊維を始め、さらに高強度を得るために、ボロン繊維、アラミド繊維、ケブラー繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維などが使用されています。

一般的な、ガラス繊維、カーボン繊維、セルロース繊維の特徴を解説していきます。

 

ガラス繊維強化プラスチック

  • 特徴:弾性力の高いガラス繊維を合わせたプラスチックです。広く様々な分野で使用されています。安価・軽量で、高強度です。
  • 用途:自動車、産業機械、スマホ・パソコンのケースやカバー、オフィス機器、家電など

カーボン繊維強化プラスチック

  • 特徴:結合の強い炭素繊維を合わせたプラスチックです。比重が鉄のおよそ1/4で、比強度は10倍、比弾性率は7倍という、とても強度の高いプラスチック素材です。また、通電効率が金属の様に高いことが特徴です。
  • 用途:スポーツ用品、釣り具、自動車、航空機、鉄道、遊技機など

セルロース繊維強化プラスチック

  • 特徴:環境負荷の少ない素材として、セルロース繊維強化プラスチックは社会から注目されています。石油由来のプラスチックの一部を植物由来のセルロースに置き換え、かつ高強度を付加したのがセルロース繊維強化プラスチックです。原料作成時のCO2排出量削減や、環境負荷の低減に大きなメリットがあります。今後、さらに研究開発が進むことが期待されています。
  • 用途:フィルター部品、食品、衣料、化粧品など
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繊維強化プラスチック取り扱いの注意点

射出成形加工における繊維強化プラスチック取り扱いの注意点を解説していきます。
繊維強化プラスチックは、原料ペレットに繊維が練り込まれているため、製造時の原料準備には、保護具(ゴーグルや手袋)の着用が必要です。ペレットを直接手で触わったり、ペレットを手でかき混ぜるような作業をすると、こまかな繊維が皮膚に付着して、チクチクします。 掻いてしまうとさらに症状が広がってしまいますので、もし付着した時は、水で流すことが有効です。

段取り換え時は、繊維が機械や装置に付着しているので、掃除機で吸い上げた後、パーツクリーナーとウエスを使用して拭き掃除をします。拭き掃除を省いて、エアーブローすると繊維が飛散して肌や目に入り危険です。

また、繊維強化プラスチックは、単一原料ではないので、立ち上げ時のパージ玉や捨てショットは廃プラとして処理します。主材がPC(ポリカーボネート樹脂)だとしても、それらの廃材はPCとして再利用や売却はできません。。

 

繊維強化プラスチックのメリットとデメリット

繊維強化プラスチックのメリットは、多種多様なナノ繊維を複合することで、耐久性や強度、物性の向上ができることです。
プラスチックを強化することで、金属を上回る利便性が得られます。
特に、軽さと強度を兼ね備える強化プラスチックは、既存商品の軽量化と高機能化に寄与します。
さらに、植物由来のセルロースナノファイバーを樹脂に複合することで、ナフサの使用を減らし、低炭素社会の実現に貢献します。

一方で、繊維強化プラスチックのデメリットは、製造コスト、成形機の消耗、リサイクルがあげられます。

ガラス繊維、カーボン繊維の強化プラスチックの製造には、繊維の配置や配向性を制御する専用の技術や装置が必要になるため、単一成分のプラスチック製造に比べてコストが高くなります。また、セルロースナノファイバーの活用はまだ歴史が浅く、製造技術や物性強化などまだ開発途上であることや、大量生産によるコストダウンに至っていないこともあり、高額素材です。

繊維強化プラスチックは、高強度故に、射出成形機のスクリューや金型の劣化消耗が早まるデメリットがあります。特にガラス繊維は、射出成形機のスクリューを削ってしまいます。毎ショット高圧縮で計量することで、ガラス繊維がやすりの様に作用してしまいます。

リサイクルの観点で見ると、複合樹脂であるためリサイクルがしづらいこともデメリットにあげられます。マテリアルリサイクルの現状は限定的です。同一製品にリサイクルする場合は、一度粉砕した後再利用になります。熱劣化や配列が崩れてしまうなどの理由で物性が劣ってしまいますので、それらの用途には品質や用途を満たせないことがあり、不向きになります。また、別の製品に混合してリサイクルする場合は、主材に対しての配合比の変化により、強度・物性が大きく異なってしまいます。配合比を管理する必要がないような雑貨や要求品質が低い製品に限られてしまいます。

マテリアルリサイクル以外の繊維強化プラスチックは廃プラとして処理されています。

 

繊維強化プラスチックの課題

繊維強化プラスチックのデメリットである製造コストとリサイクルが課題です。

今後製造技術や開発コストの回収が進むことで、コストは安定していきます。金属より軽量で強度があり、さらにデザインの自由度が高いメリットが際立っていきます。

リサイクルに関しては、繊維強化プラスチックのリサイクル状況を念頭に置き、サーキュラーエコノミーを意識した大きな枠で製品設計をすることが必要です。

 

まとめ

繊維強化プラスチックの種類、特性、取り扱い方法を解説してきました。プラスチックの弱点をガラス繊維、カーボン繊維、セルロース繊維などで補完する繊維強化プラスチックは、軽量、高強度、デザインの自由度の高さなどのメリットから、産業分野から家庭用品まで幅広く使用されています。今後、製造コストやリサイクルの課題を解決しながら、より良い素材として活用する機会が増えていきます。低炭素社会の実現に大きく寄与する繊維強化プラスチックをうまく活用していきましょう。