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ドリルの折れ検知技術

ドリルの折れ検知技術

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背景

図1. ドリル加工(左)とタップ加工(右)

被削材への穴あけ加工において、ドリルの折れは重大な問題を引き起こします。穴あけ加工の途中でドリルが折れてしまうと、所望の深さまで穴が開かず、不完全な加工状態が生じます。このような不完全な状態でタップ加工を行うと、タップ工具の先端が未加工の被削材表面に衝突し、工作機械への損傷を引き起こす可能性があります。この問題を防ぐためには、ドリルの折れをリアルタイムで検知し、タップ加工への移行前に工作機械を自動的停止させるシステムの導入が効果的です。このシステムにより、タップ工具の破損や工作機械への破損を未然にぐ防ことができます。

本研究では、工作機械のモータに流れる電流値から、ドリルの折れを検知する方法を検証しました。このアプローチにより、ドリルの折れ時に発生する特有の電流変化を捉え、加工の精度と安全性を向上させることを目指しています。

 実験方法

穴あけ加工時におけるドリルの折れを検知するために、電流データに対して、ドリルの折れを検知するための高度な異常検知アルゴリズムを開発しました。工作機械の各モータにクランプ式電流センサを設置し、被削材に複数の穴を開けるサイクルを繰り返し実施し、各サイクルにおける電流データを収集しました。

図2. 制御盤内に配置した電流センサ

穴あけ加工時におけるドリルの折れを検知するために、電流データに対して、ドリルの折れを検知するための高度な異常検知アルゴリズムを開発しました。工作機械の各モータにクランプ式電流センサを設置し、被削材に複数の穴を開けるサイクルを繰り返し実施し、各サイクルにおける電流データを収集しました。

結果

図3は各サイクルの電流データを重ねて表示したものです。図中の青線と赤線はそれぞれ、穴あけ加工が正常に行われたサイクルと、ドリルが折れたサイクルの電流データを表しています。加工開始時点から4秒経過した前後の電流データに注目すると、正常時の流は台形状であるのに対して、ドリル折れ発生時の電流は三角形状となっています。これは、ドリル折れ発生時に瞬間的に大きな負荷が生じたことによるものと考えられます。

図3. 穴あけ加工時の電流値

さらに、ドリルの折れ発生時の電流データが、5秒を過ぎたあたりから横ばいになる現象も確認されました。これは、ドリルの折れによって切削負荷がなくなり、結果として工作機械のモータの仕事量が減少したことを示唆しています。この特徴を捉えることにより、ドリル折れの検知が可能であると推測されます。

また、開発した異常検知アルゴリズムを適用した結果、ドリル折れが発生した加工サイクルにおいて異常度が大幅に上昇することが確認され、アルゴリズムの有効性が実証されました。

図4. ドリル折れによる異常度の変化

まとめ

本検証により、開発したアルゴリズムを用いた工具異常検知システムがドリルの折れを性確認検知できることがか確認さされました。このシステムは、ドリルの折れを検知したタイミングで工作機械を自動で停止させる機能を備えています。これにより、穴あけ加工時に行われるタップ加工において、ドリルが折れて穴が開けられていない被削材に対して、タップ工具が衝突することによる工作機械の損傷を与えるリスクを大幅に検証できます。

異常検知システムがドリルの折れによる電流パターンの変化を検知すると、即座に工作機械の操作を停止させることで、切削工具や機械への損傷を防止します。この技術は、製造工程の安全性と効率性を高めることに大きく寄与し、特に精密加工を必要とする領域での利用が期待されます。

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