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射出成形加工における「破れ」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形加工における「破れ」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

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射出成形加工における破れとは

射出成形加工における破れとは、成形品の一部に穴が開いたり、破損して機能を満たせない状態を指します。プラスチック製品の元になる原料に由来したり、製造工程や成形条件に影響を受けたり、保管輸送時に発生するなど様々な要因が考えられます。
成形品が破れていると、完成品の品質が低下するだけでなく、安全に関わる事故や怪我につながる可能性があるため、これは重大な不良事象となります。。

破れが発生しやすい箇所


成形品の破れが発生しやすい箇所は、主に以下の3つです。

肉薄部


成形品の肉薄部は、充填しづらく十分に保圧がかからないため、分子量が少なくなります。こういった肉薄部は、破れやすい箇所になります。
同一原料を使用していたとしても、原料ロットが変わった時はMFR(メルトフローレート)が変わります。変更点において、充填速度やガスの発生量が変化しますので注意が必要です。

ガス逃げの悪い箇所


樹脂の流れがガスを巻き込み、ガス逃げが悪くなる箇所は破れやすくなります。特に多点ゲートの収束部や、リブやボスを通過した後の収束部、流動末端は頻出箇所です。累積生産ショットが増えていくと、金型のガス抜けが悪くなり顕著に発生します。

リブやボスの周辺

離型抵抗が大きいリブやボスの周辺は、離型時の変形による破れが発生します。特に入れ子の切削加工が深い箇所は、離型バランスが悪くなると発生しやすいです。

リブやボスに発生する破れの代表的なメカニズムは下記の通りです。

  • 加充填により離型抵抗が大きい
  • ガスの影響で深いリブ部が充填不足で離型バランスが崩れる
  • 金型の劣化消耗による離型不良など

やぶれの原因と対策

破れの原因と対策を、成形品の構造、機械装置、成形条件、保管輸送方法の点から解説します。

成形品の構造に起因する破れには、設計変更が有効

成形品の機能を優先したり、金型の加工難易度を優先する理由で、成形性が悪く肉厚が薄くなったり、充填しづらくなり破れが発生します。

こういった成形品のデザインや設計に起因する破れは、後の工程となる金型作成や成形工程で改善することが難しい問題です。暫定的な処置は可能ですが、根本的な原因がデザインのため、成形性や歩留まり率が悪くなるなどの弊害を払拭できません。こういった原因には、設計を見直したり、別のデザインに差し替えるなど、設計変更することが有効です。

機械装置に起因する破れは、メンテナンスや専用機を検討

射出成形機の充填能力が低かったり、原料の配合精度が悪いことなどにより、成形品に十分な充填がされず、破れが発生することがあります。
射出成形機・周辺装置はメンテナンスを定期的に行い、経年劣化に対しては常に対処することが重要です。射出成形加工は連続成形が続き、休止期間が取れないことが多いので、定期メンテナンスは早めに計画しておきましょう。
成形品の破れは、原料管理(主材と粉砕材、フィラー、MBの配合比)が重要です。配合比が安定しないことで破れ発生がバラつく様なら、専用の配合機を導入し、配合割合を制御することがおすすめです。

成形条件による破れには、変化点の見極めを管理しましょう

成形条件は基準条件であっても、様々な要因でバラつき、破れが発生します。原料ロット、金型のガスの蓄積、気温湿度、季節、成形機の大きさなどがバラツキの要因です。
充填時間、計量時間、最少クッション位置、計量完了位置、1サイクル時間など主要パラメーターの実測値を記録しておき、監視設定をしておきます。破れが発生する前の挙動を察知し、未然に調整することが重要です。

保管輸送方法による破れは、ルール作りと適正作業の徹底

倉庫で長期保管時、湿気によって梱包資材が弱まり、成形品の形状が圧迫されたり、輸送時に緩衝材の不足で、成形品が圧迫され破れが発生することがあります。こういった外因からの破れには、保管や輸送のルール作りと適正作業を遵守することが重要になります。製造前に品質検討会を開き、梱包仕様の試作や、輸送テストをしておくことで予防できます。また、作業担当者へ周知徹底する教育を定期的に実施することが有効です。

破れを流出させないためには

発生した破れ不良を次工程に流出しない仕組み作りが重要です。

初期検査・抜き取り検査

初期検査・定時定期の抜き取り検査を徹底することで、破れ不良の早期発見をしていきましょう。特に立ち上げは、成形品が安定するまでに30分~1時間ほど、バラツキの大きい成形品ではそれ以上の時間がかかります。1つ2つの成形品を検査するだけで判断せず、バラツキが安定するまで慎重に確認することが重要です。

画像検査機の導入

人の目視確認では、抜け漏れが発生してしまいます。全数検査が必要な成形品には、画像検査機による自働化が有効です。予め設定しておいた基準画像に対して、形状に不備がある時にNG判定になります。破れをはじめ、ショートショット、バリ、変形の様な機能性能を損なう重欠点は、取引先に流出すると信頼を欠くことになってしまいます。設備投資が高額ですが、安定的に受注している成形品には有効です。

出荷前検査

製造から出荷まで長期保管されている成形品は、出荷前に品質確認をしましょう。
特に、梅雨時期、真夏を超える長期保管は、成形品の変形による破れが発生していることがあります。出荷準備の1工程と考えて、出荷前検査を実施し品質確認をしましょう。

まとめ

射出成形における破れに関して、発生原因と対策を解説しました。原料、成形機・周辺装置、成形条件、補完輸送方法などさまざまな要因が考えられる不良事象です。

今回紹介した対策を念頭に入れることで、破れ不良を未然に防いでいきましょう。日々の成形作業に活かしてみて下さい。