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射出成形加工における「変色」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形加工における「変色」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

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変色とは

射出成形加工における変色とは、予期しない色になってしまう現象です。本来の原料以外に異物が混ざってしまう変色、加熱温度や充填速度などの条件設定による変色、2次加工時や保管場所に起因するなど、多くの要素が変色の原因となります。。

変色の要因と対策

変色は、様々な要因で発生しますが、それぞれに対応する対策も存在します。ここでは射出成形工場において発生する変色不良の原因と対策を紹介していきます。

原料に起因する変色

原料が変色してしまう代表的な原因は、下記の通りです。

異材の混入による変色

射出成形加工は、一台の射出成形機で複数の成形品を生産します。同じ成形品でも色違いがあることもあります。前の原料が残ってしまうと、成形品の一部に変色が発生します。こういった異材混入は、段取り換え時の清掃の不備が原因です。掃除機やウエスを使用してペレットを清掃し、埃汚れや色素沈着は綺麗に拭き取り、エアーブローをして全て除去することがポイントです。特に、パッキンや継ぎ手部分などの隙間に注意しましょう。

乾燥しすぎによる変色

透明の樹脂や高機能エンプラなどは、必要以上の乾燥すると変色することがあります。特に熱風式乾燥機で長期間停滞した原料は、熱風が常に当たることで変色しやすいです。乾燥機を使用する際には、原料の適正乾燥時間と使用する時間を考慮して、加熱スタートしましょう。

着色不良による変色

射出成形は、主材にマスターバッチやドライカラーなどを混ぜて着色します。この時、配合比に気を付けましょう。取引先の要求によって配合比の呼び方は、30倍、3:100、3%など様々です。配合比と配合方法はしっかりと確認しておきましょう。混合比は成形品それぞれに決まっており、カラー見本がありますので、立ち上げ時に良品と比較しましょう。

粉砕材を配合しすぎることによる変色

粉砕材の配合比が多くなると、変色します。製品に対してランナーの比率が大きかったり、成形不良がたくさん出てしまった時は、粉砕材を多く配合して原料ロスを少なくしたいところです。しかし、取引先との取り決めで、成形品ごとに粉砕材の配合比は○○割までと決まっているはずです。粉砕材を多く配合すると、変色するだけでなく機能的にも劣化するので過度な配合はやめましょう。

成形工程に起因する変色

成形工程に起因する変色原因は、下記の通りです。

混錬不足による色ムラ

射出成形の計量工程において、着色材がうまく混錬ができない時に、成形品に変色が発生します。混錬不足の変色は色ムラになります。背圧を高める、溶融温度を高める、スクリュー回転を下げることで混錬を改善します。成形条件で改善できない時は、ミキシングノズルや計量部がダブルフライトになっているスクリューを導入することが効果的です。

ガス模様による変色

計量後のサックバックが多すぎたり、スクリュー回転が速すぎるとエアーを巻き込んでしまい成形品にガス模様が発生します。ゲート付近の表面にすじ状の黒いガスがでることが特徴です。ガスを巻き込みにくい様に、背圧をかけゆっくりと回転することがポイントです。

サックバックを少なくすると、鼻たれが起こりやすいので、背圧とサックバックのバランスを見極めて調整しましょう。

ガス逃げ不良のガス焼け

ガス逃げが悪い箇所や、流動末端において排出できなかったガスが圧縮されてガス焼けが起こり、成形品が変色することがあります。ガス焼けの変色は黒色のすすが付きます。原料ロットの変更時や、累積ショット数が増えてきた時に起こりやすい事象です。日々の金型清掃や定期の金型オーバーホールが有効です。

ウェルドラインが強すぎることで発生する変色

分岐した樹脂が合流する地点には必ずウェルドラインができます。そのウェルドラインが強く発生することで有色の成形品表面にくっきりと線が発生します。これは、ガス抜けが悪くなることが原因です。変色発生個所は、経時で強まっていく特徴があります。変色が強まってきたら金型ガスベントのガス汚れを除去し、ガス逃げを改善してリセットしましょう。

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2次加工に起因する変色


塗装やメッキ、蒸着など、組み立て工程など、成形加工の次工程で発生する変色とその対策は下記の通りです。

グリースやガスヤニの付着による変色

成形品にグリースやガスヤニが付着していると、2次加工時に、外観不良になります。金型から染み出した汚れ、取出し機やコンベアから付着した汚れ、梱包輸送時に付着した汚れなど様々な原因があります。2次加工で不良になると、廃棄金額は上がり、その素材となる成形品を補充する必要があります。2次加工のある成形品は、グリースやガスヤニ汚れがないかしっかりと検査するようにしましょう。

勘合時の変形による白化

射出成形工程で寸法規格に合致していても、勘合物との公差が厳しい成形品は、勘合時に無理な勘合によって白化変色することがあります。

成形工程の検査時に、勘合物との勘合検査を実施し、問題なく勘合できるかチェックしておくことが有効です。

保管や環境に起因する変色

成形が完了した後、保管時に考慮すべきことをご紹介します。

環境による変色

プラスチックは、耐候性の高いものと低いものがあります。湿度の高い倉庫で保管した原料は吸湿してしまい、乾燥しても成形に影響することがあります。また、直射日光があたる倉庫内で、成形品を天フタのない状態で保管しておくと、日焼けや変形してしまいます。原料、成形品を保管する環境は重要です。

倉庫保管時の変形による白化

射出成形は、多品種を成形する都合で、受注を予測して見込み生産をします。長期保管する成形品が、保管時に変形して変色してしまうことがあります。特に機能部品は、変色位置の機能劣化から重欠点に派生することがあります。倉庫内の梱包状態の最適化と、成形品の出荷時の出荷検査で品質を確認しましょう。

変色を流出させないためには

前項で紹介した発生対策をしていても、複数の要因が重なったり、イレギュラーが起こった時に変色不良が発生してしまいます。変色不良が発生した時に、確実に発見できるような仕組み作りが重要です。初期検査、抜き時検査、最終検査を徹底することが基本になります。各検査の手順や検査ポイントを周知し、不良が発生するかもしれないという疑いの目で検査にあたるよう作業することが効果的です。

まとめ

射出成形加工における変色について、原料、成形工程、二次加工、環境などといった視点で原因と対策をご紹介してきました。これらの原因で発生することを事前に知っておくことで、未然の対策を打つことができます。これらの知識を活かし質の高い成形加工を進めていきましょう。