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射出成形加工におけるヒケとは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形加工におけるヒケとは?主な発生要因とそれぞれの対策

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ヒケとは

ヒケとは、成形品の表面にくぼみができる成形不良です。成形品の肉厚部に発生します。外観部がヒケると見栄えが悪くなり、機能部がヒケると勘合不良や摺動不良になります。ヒケは、充填量不足や、冷却不足、または金型から取り出された後の収縮が原因で起こります。成形品の形状や、ゲートの位置、冷却時間などの影響を受けます。

ヒケの発生しやすい場所

ヒケは、特にリブやボス、肉厚部に発生やすいです。成形条件によっては、成形品全体にヒケが発生することもあります。

成形品の肉厚部に発生するヒケ

金型から取り出された成形品は、完全に冷却されていません。その後24時間くらいかけて収縮していきます。肉厚部分では、残留応力が大きくなるため収縮が大きくなり、成形品の表面にヒケが発生します。一方で、肉厚が薄い箇所では、冷却がしっかりされるので、ヒケるほどの収縮は起こりません。

リブやボスの裏側に発生するヒケ


リブやボスは、成形品の強度や剛性を高めるため、またはねじれを防止するために設けられます。リブやボスの付け根部分は肉厚になるため、反対側の表面にヒケが現れます。

成形品全体に発生するヒケ

充填する樹脂量が少ない時に、成形品の全体にヒケが発生します。スクリュー逆止リングの破損やホットランナー内マニホールドのパンクなどが原因で、充填不足になります。

ヒケ発生の要因と対策

射出成形加工におけるヒケの発生要因は、射出工程と各部の温度設定の2つに大別できます。

射出成形工程に起因するヒケ

ヒケは、充填の2次工程である保圧力の調整が重要です。ヒケとバリの状態を観察しながら、適切な保圧力や保圧時間を設定しましょう。

保圧力で考慮すべきこと

ヒケは、保圧力の設定が重要です。一般的には、射出速度(一次圧)で成形品の90~95%を充填します。残りの充填は保圧力(二次圧)を使って補填します。基本的に保圧力は、1次圧の1/3程度から始めて、5Mpaずつ調整していきます。成形品の形状によっては、段階的な圧力制御が有効です。注意点としては、必要以上の高い保圧力はバリやオーバーパックの原因となり、金型の破損に繋がります。極端な数値変更や1次圧を超える数値設定は避けましょう。

保圧時間で考慮すべきこと

ヒケには、適切な保圧時間の設定が重要です。金型内に充填された樹脂は、ゲートが固まる(ゲートシール)まで充填できます。このゲートシールまでの保圧時間が重要です。流動末端まで充填できる程度の保圧力を設定した後、保圧時間を0.5Secずつ増やしていきます。成形品の重量が安定した時間×1.1倍が、ゲートシール時間の適正値と言われます。このゲートシール時間内に押し詰めることがポイントになります。保圧時間が短いと、ゲートシール前に保圧が切れてしまうので、ランナー側に樹脂が逆流し成形品はヒケます。一方で、保圧時間が長いと、ゲートシール後も圧力をかけていることになり、タイムロスになります。

クッション量で考慮すべきこと


ヒケには、適切なクッション量の確保が重要です。基本的に計量された樹脂は、毎ショット同じ量が充填されます。計量完了位置からクッション完了位置までです。このクッション位置は、連続成形していくと安定していきます。クッション量を基準に、成形品のヒケ状態を間接的にモニターすることができます。基準のクッション位置に未達のショットは、充填量が少ない可能性があり、ヒケ・ショートしていることがあります。生産中はこのクッション量のバラツキを品質管理モニターで監視すると良いでしょう。

温度に起因するヒケ

ヒケは、金型温度や加熱筒温度の設定に大きく影響を受けるため、温度設定は慎重に行いましょう。

金型温度設定で考慮すべきこと

金型の設定温度によってヒケの大きさが変わります。金型温度が高いと、冷却しずらくなり、取り出された成形品の温度が高くなります。そのため収縮率が大きくなり、ヒケは大きくなります。金型温度を変更できない場合は、冷却時間を延長させることでヒケを最小限に抑えることができます。一方で、サイクルタイムが長くなるため、生産数が減少しますので注意が必要です。
また、冷却水のコックの開け忘れや、金型の一部の水路が詰まると、その部分の温度が上昇して、冷却不足によるヒケが発生します。連続成形を停止し、金型の表面に触れると高温になっていることがわかります。金型に触れる際は火傷に注意してください。このような場合は、冷却回路を確認し、必要に応じて水路をエアーパージして詰まりを取り除いたり、金型をオーバーホールして通水路を修正する必要があります。

加熱筒温度で考慮すべきこと

ヒケには、加熱筒温度に注意が必要です。加熱筒温度が高いと、金型内に充填された樹脂も高温になります。樹脂が高温の場合、熱いまま取り出されるので、収縮率が高くなり、ヒケが発生しやすくなります。成形品の形状や使用する樹脂の粘度によって、加熱筒温度は上げざるを得ないことがありますが、基本的には、原料メーカーの推奨温度内で設定しましょう。

肉厚製品のヒケ対策方法

ヒケは、成形条件では対処できない場合、金型を改造、改善することで対策します。

ランナーやゲートのサイズを大きくしてヒケを直す


ヒケには、ランナーやゲートのバランスが重要です。ランナーやゲートのサイズを大きくすることで、保圧力の伝達を増やすことができます。また、ゲートシール時間が伸びるので、より長く保圧を効かせることができます。

冷却水路を追加する、または製品部の近くに水路を配置してヒケを直す

ヒケは、金型内でいかに冷却するかが重要です。温調機やチラの元圧を複数回路に分岐し、満遍なく水圧がかかるようなホース配管をしましょう。スライド入れ子や、噴水構造のコアピン内配管は、水圧が下がりやすいので、単独回路にして水圧を確保することがポイントです。冷却能力不足によるヒケが直らない時は、金型の冷却回路を追加するか、成形品の近くに冷却回路を配置して冷却効率を向上させることでヒケを改善します。

ヒケを目立たなくする方法(シボ加工)

ヒケを目立たなくする一つの方法として、皮シボや梨地などがあります。金型の表面に加工を施すことで、ヒケをぼかすことができます。既に成形品の生産が進行している場合は適用できませんが、新製品を立ち上げる際には初めからシボ加工をすることで目立たなくできます。

まとめ

ヒケについて、不良発生要因や原因、不良対策について解説しました。ゲートシール時間を意識した条件設定や、温度管理を徹底しましょう。肉厚部においては、ランナーやゲートサイズの変更、冷却回路の追加や配置変更などによって改善されます。製品設計から対策する場合は、シボ加工(皮シボや梨地)などの方法を使用して目立たなくすることも有効です。事前に対策を行い、ヒケを見逃さず高品質な成形加工技術を確率していきましょう。