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通称ポリアミド。工業製品で活躍する、PA(ナイロン)の射出成形時のポイント

通称ポリアミド。工業製品で活躍する、PA(ナイロン)の射出成形時のポイント

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PA樹脂とは?

PA樹脂とは「ポリアミド」の事です。 通称「ナイロン」といわれ、私達の身の回りでよく使用されています。 ナイロンの種類は、一般的に6ナイロン、66ナイロンがあり、 主に射出成形では工業機能部品として使用される事が多い素材です。

PA独特の吸水処理による耐衝撃性、GF、タルクの補強材や充填剤を配合する事により、 更なる物性強化にする事ができます。

射出成形では主に工業製品の見えないところ、自動車で言えばエンジンルームや ドアの内部で活躍する製品になります。

また、衣類の素材にもナイロンが使われています。ナイロンは摩擦に強く軽くて 弾力性、耐久性に優れていて手入れがしやすいため重宝されます。 このように、工業部品から衣類まで様々な分野で広く使われています。

性質 / 特性

性質/ 特徴 備考
分子構造 結晶性樹脂
収縮率 少し大きい 0.5~1.5%
乳白色
ガラス転移温度 低い 50℃
耐衝撃性 吸水により耐衝撃性が増す
耐熱性 融点 PA6 225℃/PA66 265℃
耐候性 長時間の紫外線にもよる
電気的性質 一般絶縁材料
耐薬品性 基本、安定だが酸化剤に侵される
寸法安定性 吸水により寸法が変化する
機械特性 引張、曲げ、衝撃に強い
成形品の外観 金型温度が高いとよくなる

代表的な用途

私たちの生活の身近な樹脂で、色々な成形法により多種多様に使用されています。

  • 自動車部品(インテークマニホールド、エンジンルーム内、ドアの内部、燃料系)
  • 衣類関係(女性のストッキング、アウトドアウェア、レジャー、雨具)
  • 一般製品(歯ブラシ、釣り糸、ギターの弦)
  • 電気、電子(コネクター、ギア、マグネットスイッチ部品)
  • 雑貨(玩具、容器)

PAの特徴を活かした用途

PA樹脂はエンプラの中でも高機能樹脂の部類になります。 耐衝撃性、機械特性、耐摩耗性、耐熱性、耐油性、耐薬品性と大変優れており、 用途は、自動車のエンジンルーム内、吸気系部品、燃料系部品に至るまで多く 使用されています。 また、電気、電子機器にも使用されています。

ガラス配合の効果

PA樹脂にガラスを含有する事で、引張、弾性率、衝撃強さが著しく向上します。 紙袋の材料グレードの「G30」表記は、ペレットにガラスが30%含まれているという意味です。 代表的な用途は、エンジンルーム内の特に過酷とされる部品や、 ウインドーサーフィンの部品などに使われます。

PA成形加工時におけるポイント

成形後に アニーリング処理が必要

アニーリング処理とは、成形後に成形品の残留応力を取り除き、歪みを直す工程です。 アニーリング処理を行うことで、クラック(割れ)を改善します。 PA樹脂は、アニーリング処理を行わないと、成形品がクラック(割れ)します。 処理の方法は2種類あります。

  • アニール機・熱風乾燥機で、一定時間、一定温度により加熱する。
  • 熱湯タンクで、一定時間・一定温度により強制吸水させる。

作業場の注意点としては高温作業になりますので、火傷の恐れが十分あります。 安全防具等を装備の上、安全第一の作業を徹底しましょ う。

原料準備時

PA樹脂は、吸水性が大きい樹脂になります。 一般的に防湿袋で密封包装されていますので、 開封後、直ぐにホッパーに投入し使用すれば、予備乾燥の必要はありません。

注意点としては、開封して大気に触れる事で吸水が始まってしまうため、 一度吸湿してしまったPAは、使用前に下記の方法で樹脂を予備乾燥する事が必要です。

PAの予備乾燥には、乾燥効率の良い真空乾燥機、除湿乾燥機の使用が好ましい。

熱風式乾燥機は、必要以上の予備乾燥はNGです。 特にナチュラル色の場合、色が酸化着色してしまいますので、十分注意して下さい。

また、乾燥不足のPA樹脂は、成形するとシルバーストリーク、気泡、ボイドの 内部不良が発生しますので、注意しましょう。

加熱筒 / 金型温度設定時

-加熱筒 加熱筒は240℃前後に設定します。PA樹脂は糸引きが強い傾向があります。 その場合は、加熱筒ノズル温度を下げる事が有効になりますが、下げすぎると次ショットで ノズルの先端が固まってしまい、射出できなくなりますので注意が必要です。

金型

20〜 80℃に設定します。PA樹脂は他の樹脂に比べて、キャビティー内での固化速度が 比較的早いという特徴があります。 製品が薄厚の場合は、型温度を上げる方向にします。イメージとしては樹脂がキャビティーに 流れる際に流れる幅が狭いので、途中で固化が始まってしまい最終充填部まで行き届かず、 ショートになってしまいます。 製品の肉厚を考慮して、金型温度を設定するとよいでしょう。

射出成形機仕様と成形条件時のポイント

PA樹脂はPP、PEとは異なり中級者向けであり、成形条件出しにコツが必要です。 以下にポイントをまとめておきます。

鼻タレに関する対策

PA樹脂は、ノズルから鼻タレします。 機械的な恒久対策と成形条件の調整方法を下記に解説します。

機械的な恒久対策

射出ユニットに「シャットオフバルブ」が装着されていれば、機械的に鼻タレは完全に 回避できます。また、より手軽なノズル交換のみのシャットオフノズルも効果的です。

成形条件の調整による対策

鼻タレは、成形条件の内、背圧とサックバックを調整します。

背圧の調整

背圧とは、樹脂を可塑化する上で、背圧の設定は重要になります。 背圧の役目は下記の通りです。

  • スクリュー回転時にエアーの巻き込みを防ぐ。
  • 混錬を良くする。
  • 密度を安定させる。

PA樹脂の場合背圧をかけすぎると、鼻タレは強くなります。 5MPa程度からはじめ、1MPaずつ下げていき、鼻タレの状態を観察してみましょう。

サックバックの調整

サックバックとは、スクリューが無回転で後退する事をいいます。 サックバックの役目は下記の通りです。

  • ノズル先端の溶融樹脂の圧力を低減させる。
  • 鼻タレを防ぐ。

サックバックを3㎜程度からはじめ、1㎜ずつサックバック量を増やして、 鼻タレの状態を観察してみましょう。

注意点として、サックバック量はむやみに増やしてはいけません。 サックバック量を増やすことでエアーを巻き込む量が多くなり、シルバーストリーク、 気泡等の不良へ派生するからです。

鼻タレの状態をよく観察しながら、背圧とサックバックのバランスを調整する事が 重要になります。

成形条件で改善しない時は、射出ユニットの反復成形法で対策

鼻タレが改善しない時は、サイクルタイムに影響は出ますが、 1ショット毎に射出ユニットを後退させ、ノズルの先端とスプルーブッシュを切り離す ノズルバック成形も有効です。

注意点は、「ノズルの樹脂被り」です。 鼻タレしている為、ノズル先端から樹脂が少しずつ垂れている状態です。 これを数時間毎に真鍮棒などで取り除く必要があります。 怠るとノズルの先端が樹脂で覆われてしまい取り除く作業が大変です。 また、ノズルヒーターの断線に繋がることがあります。

シルバーストリークに関する対策

製品表面に出る不良であり、シルバーストリーク(銀条)とも呼ばれます。 PA樹脂ならではの要因は下記の通りです。

原料の予備乾燥不足のケース

PA樹脂の最大の特徴は「吸湿性」です。 予備乾燥が不十分だと、シルバーストリークが発生します。 一般的なガスの巻き込みによるシルバーストリークとの違いは下記の通りです。

  • 発生箇所がランダム
  • 大きさがバラバラ
  • 毎ショット発生しない

これは、原料の部分的な乾燥不足が原因です。 乾燥時間、乾燥温度を確認し、再度予備乾燥が必要です。

シリンダー内での滞留のケース

PA樹脂はシリンダーの滞留で直ぐに分解してしまいます。 滞留時間が長いとヤケが発生します。 可塑化工程にて、スクリューが停滞しない成形条件が必要です。 可塑化時間は冷却時間のマイナス1秒程度がベストです。 冷却時間マイナス1秒で計量完了する様に、スクリュー回転速度と背圧を調整します。 スクリューの停滞時間を最小にして、樹脂の滞留を防ぎます。

ウエルドラインに関する対策

固化速度が比較的早いPA樹脂は、ウ エルドラインが強く発生することがあります。 一般的な射出成形では、ウエルドラインを完全に無くす事は不可能です。 ウエルドラインを改善する方法は、大きく3つ挙げられます。

樹脂温度を上げる。

樹脂温度を上げる事により、樹脂粘度が下がりスプルーから最終充填部まで 樹脂が流れやすくなります。

金型温度を上げる。

金型温度を上げる事により、樹脂の固化速度を遅らせる事ができます。

射出速度を上げる。

射出速度を上げる事により、キャビティー内の流動性が上がります。 また複雑な形状の場合は、多段制御を使用する事により改善できます。

まとめ

一般的なPA樹脂の取扱い方法や成形加工法、成形条件について説明しました。 材料の性質、性能と高機能なPA樹脂はPP、PE樹脂に比べると取扱いが断然難しくなります。 吸湿性が極めて高い為、材料の保管や管理方法も重要となります。 材料の予備乾燥作業と成形後のアニーリング処理が必要です。 上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。

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