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射出成形における「欠け(カケ)」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形における「欠け(カケ)」とは?主な発生要因とそれぞれの対策

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欠けとは

射出成形における欠けとは、成形品の形状の一部が不足していたり、変形している状態です。ヒビとあわせてクラックと総称されることもあります。欠けの種類を大きく分けると2種類です。1つ目は充填不足の欠けで、2つ目は変形による欠けです。

欠け発生の要因と対策

欠けの要因を大きく2種類に分け、それぞれの原因と対策を解説していきます。

充填不足に起因する欠け

充填不足の欠けは、原料ロットが切り換わった時や、金型にガスが蓄積することにより、流動が悪くなることが原因です。水管から漏れた水が付着することで発生したり、ノズルから樹脂が漏れることで圧損し発生することもあります。

原料ロット変更時に考慮すべきこと

連続成形中に原料ロットが変更になると、MFR(メルトフローレート)が変化するため欠けが起こります。これは粘度が変化したことが原因のショートショットです。流動末端や、ゲートから遠い箇所に発生する特徴があります。

原料ロットのバラツキは、よくあるトラブルの1つです。

原料ロットの変更点に立ち合い、不良が発生してないか確認することが重要です。

金型のガス抜け不良で考慮すべきこと

射出成形加工で、ガス抜けは重要な管理項目です。金型のガスベントが綺麗な状態では、ガスはしっかりと排気されます。成形ショット数が増えていくほどに、ガス汚れが蓄積していきます。この欠けは、ガスを排気できないことが原因のガスショートです。ガスが集まる流動末端や、分岐した樹脂が再び合流する箇所に発生します。どの金型にも発生する事象です。

一般的に、1日に1回PL、スライド、EJピンのガス清掃を行い、ガスの蓄積を除去清掃します。あわせて累計ショットを把握し、3~5万ショット毎に金型のオーバーホールをしてガス抜けをリセットすることが重要です。

チョコ停後の立ち上げで考慮すべきこと

金型清掃時の停止や、取出しミス、設備トラブルなどによるチョコ停後に欠けが発生することがあります。金型タッチしているノズルの温度が下がってしまうショートショットや、加熱筒内の滞留時間が長くなり、ガスの発生が増えることで起こるガスショートが原因です。

停止時間が長くなるほど発生頻度が上がります。ノズルが冷えやすい金型や、高温で熱分解しやすいスーパーエンプラなどに発生しやすい事象です。

スムーズな立ち上げをするには、一度ノズルを後退し、加熱筒内に滞留した樹脂をパージすることがポイントです。

水漏れ時に発生する欠け

限定的な事象ですが、水漏れが発生し製品面に水が侵入すると、その箇所が欠けます。水が製品面に転写され充填不足になります。事象箇所は、成形品表面がテカテカして、ガス汚れも付着する特徴があります。

一旦水漏れが始まると、ずっと発生する事象です。発生の検知が遅れると大量不良になりますので、製品の外観検査を確実に行い、成形機の日常点検に金型の水漏れ油漏れ確認を盛り込みましょう。

ノズルの樹脂漏れによる欠け

ノズルと金型の間から樹脂が漏れることが原因でショートショットになることがあります。ノズルの樹脂漏れは、様々な原因が挙げられます。

  • 金型とノズルの接触面のRが合っていなかったり、一部に傷がある
  • スクリュー清掃後に、射出台のセンターが合っていない
  • 射出成形機のノズルタッチ圧が不足

発生した状況を良く分析し、何が原因で樹脂漏れしたのかを特定し対処することが重要です。

変形に起因する欠け

変形の欠けは離型動作や、取出し工程、梱包倉庫管理のいずれかで外因が加わり成形品の一部が変形してしまうことが原因です。

金型離型動作で考慮すべきこと

金型の開閉、エジェクター動作において、成形品の一部が変形することが原因です。
油圧・空圧のスライド入れ子や、内スライド、ネジ抜き装置などが組み込まれている複雑な金型は、金型の消耗に応じて可能性が高くなります。これらに起因する欠けは、金型の摺動部に発生します。

また、製品のエジェクター工程の変形は、突き出しバランスが悪くなったり、一部のピンがかじったりすると発生します。特にボス、リブ、EJピンの接触面に発生します。

こういった金型の動きに起因する欠けは、徐々に発生する特徴があります。

発生がバラつくので検知が難しいですが、成形品の外観検査を徹底する他に、稼働中に異音がないか点検することが効果的です。

取出し工程で考慮すべきこと

取出し機との連動が原因で、成形品が欠けることがあります。取出し機の設定に起因した場合と、金型の摺動が悪くなったり、取出し機の性能ロスによる場合の2種類があります。

取出し機の設定に起因する場合は、立ち上げから連続して発生します。よくあるのが、取出し時に成形品を押し付けて欠けてしまう事象です。エジェクター動作と取出し動作によって成形品が挟まれて欠けてしまいます。

金型の摺動が悪くなったり、取出し機の性能ロス(エアー漏れや、チャックシリンダの摺動不具合)で欠けが発生する場合は、連動のタイミングがズレています。

こういった性能ロスには、取出しのタイミングを正常に戻すことがポイントです。成形品の外観検査を徹底する他に、稼働中の異音や動作異常がないか点検することが効果的です。

梱包仕様で考慮すべきこと

自重落下の成形品や、箱に整列する成形品は梱包仕様に不備があると欠けてしまいます。

自重落下の成形品は、製品受け箱にためて生産します。この時の欠けは、入れすぎが原因です。製品受け箱にバラ落としが可能な成形品であっても、その箱の底に入っている成形品にはかなりの重さがかかります。1つの箱にたくさん入れると保管スペースが少なくなったり、箱交換の手間が減るなどメリットはありますが、欠けてしまうリスクがあり、もし欠けていた場合の全数検査はかなりの労力になりますので、適正な入り目で管理することが重要です。

また、箱に整列する成形品も同様に、梱包箱の中で成形品同士が傷付け合わないように、緩衝材を使用したり、梱包レイアウトに余裕を持たせることが重要です。

倉庫保管で考慮すべきこと

倉庫保管時に欠けが発生する場合は、長期保管による変形が原因です。段ボール箱に入れて保管していると四季の寒暖差と湿気で箱が劣化することで成形品は変形します。また倉庫のスペースは限られているため、パレット積みされた上に、さらにパレットを重ねて積む時などに発生しやすい事象です。

倉庫内の運用ルールを決めて作業者に徹底し、計画的な生産をすることがポイントです。

欠けを流出しないためには

発生した欠け不良を流出させないためには、立ち上げ、生産中、生産終了時の品質検査の徹底が重要です。立ち上げはバラツキが大きいので、30分~1時間は成形品の品質は安定しません。立ち上げたら次の仕事に進むのではなく、品質規格に合格しているかどうか入念に確認することがポイントです。

また、成形品の変形に起因する欠けは、稼働時に異音や動作不良がないか確認することが重要です。

まとめ

射出成形における欠けは、様々な発生原因に起因する事象です。事象を良く観察し、何が原因なのか分析し、対処していくことが重要です。

欠けを判断する知識を先に身につけておくことが重要です。発生・流出する前に予防できることはたくさんあります。高い成形加工技術の確立をめざしましょう。