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プーリとは|プーリの種類と代表的な加工方法・課題について

プーリとは|プーリの種類と代表的な加工方法・課題について

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プーリは動力伝達に用いられる円盤状の部品で、ベルトと共に用いられます。動力伝達機構にはプーリ以外に歯車などがありますが、歯車と比較してベルトとプーリの間に滑りがあることから、動力伝達の過程でトラブルが発生したとしてもその影響をある程度吸収できる点が特徴的です。一方で、滑りにより動力の伝達効率は他の動力伝達機構に比べて劣る場合があります。 この記事ではプーリの種類と、代表的な加工方法・課題について解説します。

代表的なプーリの種類について

代表的なプーリの種類には、一般用Vプーリと歯付きプーリがあります。


一般用Vプーリの特徴と用途

一般用Vプーリは「JIS B1854」に規定されており、Vベルトと組み合わせて使用します。円盤の周上にV型の溝が付けられており、接触面積が大きいため滑りが小さく、溝がない平プーリと比べて伝達効率が高い点が特徴です。 さまざまな大きさの負荷に対応できるため、家電製品や工作機械、輸送機器など幅広い製品に採用されています。

歯付きプーリの特徴と用途

歯付きプーリは「JIS B1856」に規定されており、リブという歯がついた歯付きベルトと組み合わせて使用します。摩擦力により動力伝達する一般用Vプーリと比較して、歯がかみ合っているためさらに安定した動力伝達が可能です。また、小型・軽量にでき、騒音が小さいといった点も歯付きプーリの特徴です。これらの特徴により、精密機器や自動車のタイミングベルトなどに使用されています。


プーリの加工方法について

プーリの加工方法には、フライス加工や旋削加工などさまざまなものがあります。そのなかでも効率が良い代表的な加工法として、キー溝加工と歯切り加工があげられます。

キー溝加工

歯付きプーリの溝をキー溝加工で削り出します。キー溝加工で使われる機械や工具には、ブローチ盤やスロッティングツールがあげられます。

ブローチ盤

ブローチ盤はブローチ加工に用いられる工作機械です。ブローチ加工は、長く特殊な形状をしたブローチとよばれる切削工具で行う除去加工の一種です。 少ない工程で短時間で加工でき、同一部品の再現精度が高い点がブローチ加工のメリットです。一方で専用の工具と設備が必要になるため、少量生産には向いていません。

スロッティングツール

キー溝加工は、ブローチ盤を使用しなくてもスロッティングツールという工具を使うことで、旋盤やマシニングセンタでも可能です。スロッティングツールが開発されたことで、専用の設備が必要だったキー溝加工を一般的なNC工作機械で加工できるようになりました。

歯切り加工

プーリの溝を歯切り加工で削り出します。歯切り加工で使われる機械や加工法には、ホブ盤やギヤスカイビングを使用した方法があげられます。

ホブ盤

ホブ盤は歯切りを行う工作機械で、ホブとよばれる専用工具を回転させながらワークに押し付けることで、歯車を加工する機械です。ホブの種類を変えることで、プーリだけでなく、スプラインやスプロケットなどにも対応できます。

ギヤスカイビング

ギヤスカイビングは歯車を加工する方法のひとつで、スカイブは「薄くそぐ」という意味を持ちます。ワークに対して工具を斜めに配置し、これらを同期しながら高速回転させることで、接触点に発生する滑りにより溝を少しずつ切削し、歯車を形成します。 5軸加工機などの複合加工機を用いるため、工程を集約できる点が特徴です。

プーリ加工で発生する課題

プーリは完成させるまでに、旋盤やマシニングセンタ、ブローチ盤、ホブ盤などの複数の工程が必要です。これらの工程を経る度に段取り替えが必要であり、その手間や仕掛かり在庫が発生してしまうため、生産性が上がりにくいという課題があります。

プーリ加工時の課題対策

近年は、新たなツールの開発により複合加工機で実現できることが増えており、ミーリング機能を備えた旋盤(ターニングセンタ)なども開発されているため、ブローチ盤やホブ盤などの専用機の出番が大幅に減っています。段取り替えなどの手間を省き、多品種少量生産の効率を高めるためには、このような複合加工機を用いるのがひとつの選択肢です。

また、少品種多量生産を行う場合には、旋盤などの汎用機とホブ盤のような専用機を組み合わせることで、生産性の向上が期待できます。 プーリ加工の生産性を向上させるためには、各設備の得意・不得意を十分理解し、状況に合わせて汎用機、専用機、複合加工機を使い分けることが重要です。

プーリの種類と代表的な加工方法・課題まとめ

この記事ではプーリの種類と、代表的な加工方法・課題について解説しました。 代表的な動力伝達機構として幅広い製品に用いられているプーリは、生産性が上がりにくいことからさまざまな加工法が生まれています。汎用機と専用機を組み合わせるなど、設備や加工法の特徴を十分理解し、目的と状況に応じた手段を選択することが重要です。