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射出成形におけるバリとは?主な発生要因とそれぞれの対策

射出成形におけるバリとは?主な発生要因とそれぞれの対策

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バリとは

バリとは、製造された製品の外周や縁にはみ出た部分のことを言います。 「張り出している・突起」を意味する英単語「Burr」から転じて、バリと呼ばれています。

製造業や建設業など広く使用される用語です。

射出成形におけるバリは、一般的に、溶融樹脂を金型に充填する際にキャビコアの合わせ面(パーティングライン/PL面)に沿った部品のエッジや金型部品の境界を形成する場所に発生します。

バリ発生の要因

射出成形加工において、代表的なバリの発生要因は下記の通りです。

(ⅰ)過充填

金型内に溶融樹脂を必要以上に充填すると、金型のキャビコアの合わせ面(PL面)などからはみ出しバリが発生します。

(ⅱ)金型の消耗

射出成形は、金型を使用して同じ形状の製品を大量に生産することができます。数万〜数百万ショットと、繰り返し動作を重ねることで、金型が老朽化していきます。すると、充填圧力が高くかかる部分や、スライド摺動部などが消耗しバリが発生します。

(ⅲ)金型取り扱い

射出成形の立ち上げや、トラブル発生時、金型内からエジェクトされず残ってしまうことがあります。この時、金型の取り扱いを知らない人、あるいは不注意によって金型を痛めてしまうことがあります。金型に凹み傷をつけてしまうと、製品は凸形状のバリが発生します。

バリの種類と発生しやすい箇所

金型の構造でバリの発生しやすい場所は異なりますが、一般的にバリの頻出箇所は共通です。

(ⅰ)金型キャビコアの合わせ面(PL面 = パーティングライン / Parting Line)

金型はその大きさに合わせて高圧で型締されます。 何十〜何千トンもの力をかかり、充填圧も高圧の為、

  • 過剰充填
  • 充填の偏り
  • 薄肉部

など、必要以上の充填圧力が集中した時に、バリが発生します。

(ⅱ)入れ子の合わせ面

複雑な形状の成形品を作るには、複雑な形状の金型が必要です。一般的に金型は、母型(おもがた)と呼ばれる金型本体にいくつものパーツがはめ込まれた入れ子構造となっています。入れ子構造となっていることで、部分的な金型の消耗やトラブルを、必要最小限手で修正することができます。 その反面、入れ子と入れ子の合わせ目がバリの発生ポイントになります。

(ⅲ)スライド入れ子の合わせ面

金型の構造上、型開き動作または製品エジェクト動作に干渉する部分は、スライド入れ子で作られます。スライド入れ子は、金型の合わせ精度が低いとそのままバリになります。 スライド入れ子は摺動するため、クリアランスが設けられています。累積ショットによりそのクリアランスが消耗すると、ガタつきが出てきます。ガタついた部分の隙間からバリが発生します。

また、スライド入れ子は、PL(= Parting Line / パーティングライン)や入れ子の合わせ面より金型の消耗が速いので、バリの頻出ポイントになります。

(ⅳ)ゲート

ゲートは、金型の製品部に溶融樹脂を充填する入り口です。充填から保圧工程において、高圧がかかる部分です。型開き動作に連動して、ゲートは切り離されます。この時、ゲートが、ランナー側で切り離されると、ゲートバリが発生します。保圧力を多段階にしてゲートにかかる圧力を変更したり、型開き速度を変更することで、ゲート切れが改善します。 なお、ゲートは、流量に関わる部分ですので、金型の形状を容易に構造変更できません。条件調整でゲートバリが改善しない時は、ニッパー切断の追加工で対応します。

(ⅴ)ランナー、ダルマピン

製品部ではなく、ランナー、ダルマピンに必要以上の充填圧と保圧がかかると、バリが発生します。ランナーの合わせ面に発生したバリが大きくなると、ランナーの離型不良による取り出しミスが起こることがあります。必要以上の保圧力と保圧時間は不要です。

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バリ予防・対策の基本

上述の代表的なバリの発生要因それぞれについて、対策案として以下が挙げられます。

(ⅰ)「過充填」にはショートショット法が有効

このケースでは、成形条件の調整が主な対策方法となります。

必要以上に充填されてしまうことを避けるには、ショートショット法の活用が有効です。立ち上げ、チョコ停時などは、1ショット目からフル充填することなく、意図的にショートショットを作成し、成形品の状態を見ながら充填量を増やしていくとバリへの対策として有効です。 また、同一原料でも原料ロットが切り替わる時は注意が必要です。流れの良い原料ロットに切り替わると、同じ充填速度でも、流れ方が変わります。特に、複雑な構造の金型に多段変速で充填している成形条件下では、条件の許容幅が少ないことでバリが強まる傾向があります。 原料ロットの切り替え点は、製品の形状確認をしましょう。

(ⅱ)「金型の消耗」に起因するバリには、金型にやさしい成形条件で対策

金型の消耗は避けられません。成形品の性能や、客先要求品質をしっかりと把握し、最適な成形品を作りましょう。 型締力は、最少検出圧力を参考にし、PLが型締めするのに必要な最小値で十分です。 成形条件の内、特に充填圧力、充填速度、保圧、保圧時間、加熱筒温度の条件設定並びに調整は、慎重に進めます。 型開閉動作と製品エジェクト動作は、速ければサイクルアップに繋がり魅力的ですが、金型を壊さないことが最前提です。 それぞれにおいて、必要以上の条件設定は、バリ発生の起因になり、金型の消耗を早めます。 適正な成形条件で成形しましょう。

(ⅲ)金型取り扱い方法を徹底する

射出成形において金型が9割と言われるほど、金型の良し悪しで成形品の品質が左右されます。金型の取り扱いは細心の注意を払いましょう。 若手や未熟な担当者が金型のトラブルに関して作業禁止したり、熟練者、金型に詳しい人が手順書を作成し、金型を傷つけることの無い様、事前のルールを決めておきましょう。

バリ発生を的確に検知するために

ここまでで、バリ発生の主な要因とそれぞれへの発生対策について触れました。しかし、どれだけ対策を行っても完全にバリ発生をゼロにするのは難しいものです。バリ発生を的確に検知するためには以下の観点に意識を向けることが大切です。

(ⅰ)初期検査

立ち上げ時の初期検査が重要です。一般的に、立ち上げ時は、金型温度が安定していないため、製品にバラツキがでます。立ち上げのバラツキが安定し、毎ショット良品であることを確認してから、良品取りを始めます。また、前回の生産と同じ成形条件で立ち上げたとしても、良品とは限りません。まず、事前に準備している基準サンプルと良く見比べて、バリの無いことを確認しましょう。

(ⅱ)タイムサンプル

金型の消耗によるバリ発生は事前検知が難しいです。対策として、生産中に定時でタイムサンプルを採取し、その推移をマークしておきましょう。もし、バリのサイズや厚みが次第に増しているようなら、客先に相談し限度を把握しておきましょう。成形品の多くは、組み立てられ1つの製品になります。 成形品にバリがあることで、組み立てられない、バリが干渉して動かないなど、2次被害が出ないよう注意が必要です。

(ⅲ)金型の定期メンテナンス

金型は、数万ショットごとに定期メンテナンスをしましょう。成形機上で、手の届く部分だけの日常メンテナンスでは不十分です。金型は使用に伴いガスヤニは蓄積し、グリースも切れていきます。 金型を細かなところまでばらして、清掃とグリースアップが必要です。(金型オーバーホールと呼びます。) キャビコアを別々にし、入れ子、スライド入れ子、エジェクターピン、ストリッパープレート、ガイドピン、冷却水管を綺麗清掃、グリースアップ、Oリングやガスケットの交換をします。こまめなメンテナンスはダウンタイムの回避につながります。

まとめ

バリについて、特に射出成形工場における不良対策・生産性の改善を考える際に注意しておきたいポイントをまとめました。 バリの要因は大きく分けて3点です。過充填、金型の消耗、金型の取り扱いを管理し、より高い成形加工技術の確立を目指しましょう。