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ポリサルフォン樹脂物性と用途、取扱い方法について解説

ポリサルフォン樹脂物性と用途、取扱い方法について解説

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ポリサルフォン樹脂とは

ポリサルフォン樹脂(PSF:PolySulfone)は、琥珀色のスーパーエンジニアプラスチックです。ポリサルホン、ポリスルフォンと呼ばれることもあります。

耐熱温度175℃で、機械性能が高く、耐薬品性や、成形加工性にも優れます。食品や医療機器の安全性に関する法令に適合しており、高機能な物性と、滅菌処理が繰り返し可能なことから、医療機器や試験・検査機器などに使用されます。一般に原料価格が2,000円/kg以上する高額原料にあたります。

一般的なポリサルフォン樹脂の特性として、下記が挙げられます。

  • 耐熱性に優れる
  • 耐衝撃に優れる
  • 対候性に優れる
  • 電気特性に優れる
  • 自己消火性が高い
  • 寸法安定性が良い
  • 耐加水分解性が高い
  • 滅菌処理に強い

性質 / 特性

性質 / 特徴 備考
分子構造 非結晶性樹脂
比重 小さい 1.25-1.49
収縮率   小さい 0.7%
  茶褐色
ガラス転移温度   高い 190℃ 脆化温度:-100℃
耐衝撃性 強い
耐熱性 175℃ 自己消火性
耐候性 優れる
電気的性質 優れた電気絶縁性をもつ
耐有機溶剤性 一部の溶剤に弱い(芳香族溶剤)
寸法安定性 成形しやすい
機械特性 強い
成形品の外観 良い

代表的な用途

広い範囲で使用できる高機能プラスチックです。加水分解に強い耐性があるため、熱水、アルカリ性薬品に強く、オートクレーブなどによる繰り返し殺菌(132℃)にも対応できます。

主に、医療機器、検査機器、食品衛生などの分野で使用されます。

代表的な成形品には下記があります。

  • 医療・検査機器:滅菌トレイ、消毒用パレット、人口腎臓用中空糸、試験機器
  • 電気・電子分野:電子レンジ部品、プリント基盤

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ポリサルフォン樹脂の成形加工時におけるポイント

ポリサルフォンは、物性が高いため、その取り扱いが難しい樹脂です。

下記に、取り扱い時のポイントをまとめていきます。

高額な原料単価への配慮

ポリサルフォンは、高機能なスーパーエンジニアプラスチックのため、その原料単価が高額です。

グレードによりますが、多くが2,000円/kg以上のとても高価な樹脂です。

そのため、パージや、捨てショット、条件調整、停止作業などの原料廃棄ロスを、最小限に抑えることが効率的な生産を行うのに重要となります。

PC(ポリカーボネート)等の樹脂を用いて、代替パージしたり、生産停止時の原料投入止めをシビアに行うなど、歩留まり率を意識しましょう。

温度設定への配慮

ポリサルフォンを用いての射出成形においては、原料の予備乾燥温度、加熱筒温度、金型温度など温度設定もポイントとなります。

予備乾燥温度設定で考慮するポイント

十分な予備乾燥が必要です。高額な原料を確実に乾燥するためには、熱風式の乾燥機よりも、除湿乾燥機や真空乾燥機を使用しましょう。また、生産に対して、乾燥材の供給が間に合う様に、乾燥機の容量に気を付けましょう。

  • 予備乾燥温度の目安: 145℃ 乾燥時間:4時間

加熱筒温度設定で考慮するポイント

加熱筒温度は、通常350℃前後に設定します。高圧縮タイプのスクリューを使用している成形機は、溶融しやすいように少し高めに温度設定します。

  • 加熱筒温度の目安:340~390℃

金型温度設定で考慮するポイント

金型温度は、100℃前後に設定します。冷却媒体に油を用いる金型温調機や、金型に直付けする棒ヒーターを使用して温度管理します。

  • 金型温度の目安:90~150℃

成形不良時対策

ポリサルフォン樹脂の成形中に、よく発生する不良は以下の通りです。

練り込み異物への配慮

加熱筒内の高温下で滞留した樹脂が、高圧縮されることで、炭化物が発生しやすく、その一部が剥離して練りこみ異物になることがあります。

スクリュー回転と背圧のバランスを調整し、必要最小限のスクリュー回転数と背圧を設定しましょう。

無駄な高回転と高圧縮は、練りこみ異物の原因になります。

練り込み異物が多く良品が取れない時は、原料の廃棄ロスが多くなってしまうので、生産を一時中止し、スクリュー清掃をしましょう。

グリース付着の原因と対策

金型が高温のため、耐熱グリースを使用します。耐熱グリースの種類によっては、金型の開閉時に製品部に飛散することがあります。

金型の日常メンテナンスに合わせて、余ったグリースの拭き取りをしましょう。

飛散が激しい場合は、1日に数回と、あらかじめ回数を決めて、飛散する前にグリースを拭き取る清掃をして予防しましょう。

ウェルド・フローマークの原因と対策

医療機器の試験機、トレイなどの肉厚製品は、充填時の流れがばらつくことがあります。累計ショットが増えてきてガスベントが詰まっている場合で、日常金型清掃では改善しない時は、金型のオーバーホールが必要です。また、原料ロットが変更になった場合は、変更点をマークして、即座に成形条件を調整しましょう。

まとめ

ポリサルフォン樹脂は、高機能で、滅菌処理が繰り返し可能なことから、主に医療、検査機器に使用されています。高価な原料ですので、歩留まり率を意識することがポイントです。

ポリサルフォン樹脂の取扱い方法や成形加工時のポイント、よく発生する不良について説明しました。

上記例のような要素を考慮し、より生産性の高い成形加工を目指しましょう。